根管治療の成功率をご存知ですか? 様々な論文で書かれていますが、一般的に成功率は5~6割と言われています。つまり治療をしても約半数が再治療になってしまうのです。そして再治療をした歯の更に半数が再々治療になってしまいます。再治療を繰り返すたび、残っている歯の量が減ってしまい、どんどん強度が下がります。強度が下がった歯は、割れてしまい抜かなければならなくなるリスクが高いのです。
つまるところ精密な根管治療をすることで歯の寿命を伸ばすのです。
当院では、根管治療の成功率を上げるために、マイクロスコープ、歯科用CT、ラバーダム防湿、ニッケルチタンファイル、MTAセメント、超音波治療器など、様々な設備や材料の導入、技術の習得を積極的に行い、より精密な再治療の少ない根管治療を目指します。
マイクロスコープを使用した精密な治療
根管治療では、精密性が非常に重要です。根管内は縫い針程度の太さであり、ミクロン単位の処置を行う必要があります。歯の削り過ぎは歯の根が折れるリスクを高め、不完全な洗浄や消毒は細菌感染の再発リスクを増加させます。過去には、根管内部の治療は歯科医師の「経験」や「勘」に頼る手探りの作業でしたが、マイクロスコープの登場により、小さなものを大きく拡大し、目で確認しながら繊細な処置を確実に行うことができるようになりました。これにより、圧倒的に精密で高品質な治療が可能になりました。
当院では、20倍の視野を持つ「マイクロスコープ」を導入しており、より精密かつ確実な根管治療を提供することを目指しています。
歯科用CT (三次元レントゲン)
歯科用CTは、歯の立体的な三次元のレントゲン画像を撮影する装置です。根管は非常に複雑な形状をしており、一本の歯に複数の分岐が存在することもあります。根管の清掃や消毒を確実に行うためには、まず根管の構造や病巣の位置や大きさを正確に把握することが非常に重要です。このような診査や診断には、歯科用CTが必須で、平面のレントゲン画像では見えない細部まで詳細に確認することができ、より精密な診査や診断、そして治療が可能になります。
ラバーダム防湿
口の中には細菌が多量に存在しています。そんな口の中で無菌的な治療をするためには、口の中から治療する歯を隔離する必要があります。
口の中の唾液やむし歯菌、歯周病菌、そのほかの細菌を治療している根管内に入れないためには、ラバーダム防湿は非常に重要な処置になります。ラバーダムは薄いゴム製のシートで、治療対象の歯以外の領域を覆い、口腔内の細菌が根管内に侵入することを防止します。ラバーダムの使用により、根管治療の成功率を飛躍的に向上させることができます。
ニッケルチタンファイル
根管治療では、歯髄を取り除くためにファイルと呼ばれる細いヤスリのような器具が使用されます。一般的に、ステンレスファイルとニッケルチタンファイルの2種類が使用されています。ステンレスファイルは硬く、曲がっている根管に入りづらく、根管の壁を傷つける可能性があります。それに対して、ニッケルチタンファイルは超弾性の特性を持ち、曲がった根管に沿って確実に進入することができます。これにより、根管内の歯髄を精密に除去することができます。
MTAセメント
根管治療の最後の段階として、根管内に充填材を緊密に詰め込むことで、細菌の再侵入を防ぐ根管充填と呼ばれる処置を行います。充填が不十分で隙間があると、数年後に細菌感染の原因となる可能性があります。 一般的な根管治療では、ガッタパーチャと呼ばれるゴム状の樹脂を使用して隙間を埋めます。しかし、根管内に穿孔や根の先端部の損傷などがある場合、ガッタパーチャによる治療は難しく、それが原因で細菌感染が起こり、周囲の骨吸収や歯ぐきの腫れや痛みを引き起こすことがあります。
MTAセメントは、ガッタパーチャと比較して格段に辺縁封鎖性に優れており、このようなケースでも細菌の侵入を防ぐことができます。MTAセメントは生体親和性が高く、殺菌作用があり、歯の組織再生を促進する効果もあります(再石灰化促進作用)。そのため、治療後の経過が良好になります。
MTAセメントは根管充填において優れた選択肢であり、難しい治療ケースでも成功率を高めることができます。
超音波治療器
マイクロスコープ下の根管治療では、肉眼やルーペ下とは異なり、根管の細部までしっかり見えます。そのため、根管内部の細かい汚染物を除去したり、消毒薬を活性化させたりするために超音波治療器を用います。